【書評】『投資の大原則』老後不安に備えたい投資初心者のための教科書
老後不安に備えて「投資を始めよう!」と思った方は多いと思います。
でも「なかなか一歩が踏み出せない」「暴落が怖くて投資が始められない」とお悩みの方もいるのではないでしょうか。
そんな方でも投資を始めてみようかなと思える本が『投資の大原則』です。
『投資の大原則』を読んで投資の本質を学び、投資を始めて、少しでも老後不安を減らしていきしましょう。
『投資の大原則』の要点
『投資の大原則』には投資の教科書とも言えるような原理原則、本質が書かれています。
要点をまとめると、大きく4つです。
- すべてはお金を貯めることから
- 投資を続けることでお金が増える理由
- 投資はシンプルに
- 投資は勝つことよりも負けないことが大事
一つずつ説明します。
すべてはお金を貯めることから
「すべてはお金を貯めることから」読み始めてすぐに大きく書かれてます。
「スタートは投資することじゃないんだ。貯金することが投資のスタートなんだ!」という著者の二人、バートン・マルキールとチャールズ・エリスの強い意志を感じます。
投資に使うお金を貯めるという直接的な意味合いもありますが、もう少し広い視野で考えると、貯金をとおしてお金との付き合い方を学ぶことが大事なんだと思います。
貯金する方法はシンプルです。
収入-支出=貯金
収入を大きくして、支出を小さくできれば、あっという間にお金持ちです。簡単ですね。
みんな頭ではわかってるんです。でもなかなか貯金ができない。。。
収入を増やすことは、自分でコントロールできることではないので難しいです。でも、節約をして支出を減らすことは自分でコントロールできます。
節約で支出を減らす理由は2つです。
- 「あの時ああすればよかった・・・」と将来後悔しないため
- 将来の選択肢が広げるため。将来「こうしたい」という夢を実現するため
大きな枠で考えると、節約することは将来の自分への投資と考えることができます。
とはいえ、やりすぎはよくない。無理のない範囲で、なくなっても困らないところから節約して、自分なりの方法をみつけることが大切だと書かれています。
節約をとおして、自分なりのお金との付き合い方を身につけていきたいですね。
投資を続けることでお金が増える理由
ゆっくりと確実にお金を増やす秘訣は、投資で得た利益を再投資することにあります。
具体的に説明します。
1年で5%のリターンがある株式を10,000円購入したとします。
1年後には10,000円の元金と500円のリターン(10,000×5%=500)で10,500円になります。
次の年に元金とリターンを合わせた10,500円を元金にして、再び同じ株式を購入するとどうなるでしょうか?
10,500円の元金と525円のリターン(10,500×5%=525)で11,025円になります。
これを続けていくとどうなるか・・・
3年後 11,025×5%=11,576
4年後 11,576×5%=12,155
5年後 12,155×5%=12,762
10年後には、16,287円。利益を再投資しなければ5,000円の増加ですが、利益を再投資することで6,000円以上増えています。
投資を続けることでお金が増える理由は、投資で得た利益を再投資し、複利効果を利用することにあります。
「時は金なり」と言いますが、その本当の意味は複利を利用してお金を増やすことにあるのかもしれません。
アインシュタインが「複利こそが宇宙で最も強力な力」と言ったことも納得です。
さて複利効果の偉大さについて説明しましたが、複利効果を利用されるパターンもあります。
カードローンやリボ払い、車のローンに住宅ローンなどの借金です。
複利効果であっという間にお金が吸い取られていきます。
特に絶対にやってはいけないのはリボ払いです。一度はまったら抜け出せない底なし沼みたいなものですね。近づくのはやめておきましょう。
投資はシンプルに
投資というと株式を買ったり売ったりして利益を出していくイメージがあると思います。
でも『投資の大原則』に書かれている投資は全く違います。
では何に投資するのでしょうか?
それはインデックスファンドです。
インデックスファンドを簡単に説明すると、投資家から集めたお金で株式銘柄を選ばず、市場にある銘柄全部を買って運用するファンドです。
少し雑な感じの運用な気がしますが、「株式個々の上がり下がりはあるけど、市場全体が成長してリターンが上がればいいよね」というイメージでしょうか。
インデックスファンドの対極にアクティブファンドがあります。
投資家から集めた資金を使って、プロのトレーダーが株式の売買をし、より高いリターンを狙うファンドです。
なんだかアクティブファンドのほうがリターンが良さそうな気がしますよね。
過去20年のアクティブファンドとインデックスファンドのデータを見てみると、アクティブファンドがインデックスファンドに負ける確率が70%以上というから驚きです。
ではなぜアクティブファンドは負けてしまうのでしょうか?
アクティブ・ファンドは運用するのにコストがかかるからです。
売買にかかるコスト、運用する人にかかるコスト、いろいろなコストがリターンから差し引かれます。結果、最終的なリターンでは運用コストの低いインデックスファンドに軍配があがるというわけです。
投資リターンを確実に増やす原則は、投資にかかるコストを最小限にすることなのです。
投資は勝つことよりも負けないことが大事
投資をしようと思うことはすばらしいことではありますが、投資で勝ちたいと思うことは危険だと書かれています。
勝ちたいという思いが強いほど、いろいろな商品に目移りしたり、値動きで右往左往したり、余計なことをしてしまいます。結果勝つ可能性は低くなる。
投資する時は、いかに大きく負けないかにフォーカスすることが重要なのです。
投資で大きく負けないために行うことは、証券の種類(株式・債券・金など)、市場、時間を分散して投資していくことです。
特に大切なことは時間を分散すること。
定期的に定額でコツコツと投資し続けることです。
なぜでしょうか?
株価が高い時は少ししか買えず、低い時はたくさん買えるからです。
つまり株価が高い時にたくさん買って、暴落時に貧乏くじを引くリスクを減らすことができ、株価が安い時に少ししか買わず、値上がりした時に恩恵を受けられないリスクを減らすことができます。
投資も貯金と同じようにコツコツと続けることが大事なのだと思います。
まとめ:9つの基本ルールを覚えよう
投資初心者の教科書として、『投資の大原則』を紹介しました。
資産形成をする上で、特に重要なことが9つにまとめて書かれています。
- お金は若いうちから定期的に貯めよう
- 会社と国に資産形成を手伝ってもらう(日本の場合:会社には厚生年金で、国にはidecoや積立NIZAで)
- 不備の出費に備えて、現金は用意しておこう
- 保険をかけているか確認(シンプルでコストが低いもの)
- 分散投資をすれば心配の種が減る
- クレジットカードのローンは使わない
- 短期運用への衝動を無視する
- 低コストのインデックス・ファンドを使う
- 目新しい投資を避け、オーソドックスな投資をする
今回紹介しきれていないルールもありますので、気になる方は『投資の大原則』を読んでいただければと思います。
また、『投資の大原則』ではアメリカの税制・制度を利用する前提で書かれていることもあり、日本の税制・制度とは異なるところもありますのでご注意ください。
しかし、資産形成をする上での基本的な考え方は世界共通なので、考え方を学びたい方は一読することをオススメします。